社員から副業や兼業をしたいと相談があったとき、対応にためらう会社もあります。しかし副業等を始めても本業に支障が出ないかということや、社員が長時間労働になって健康面に支障が出ないかを確認して、問題がなければ認めるケースが増えてきます。
T.副業を禁止できるか
これまでの裁判の例を見てみますと、副業を許可制にしている会社の社員が会社の許可なく副業をしたとき懲戒処分をすることの妥当性については、「会社の秩序に影響せず、かつ会社に対する労働の提供に格別の支障が生じない程度・態様の二重就職は禁止違反とは いえず、そのような影響・支障のあるものは禁止に違反し、懲戒処分の対象となる。」(筆者が一部編集)としており、これらを考えると、会社は、全面的禁止にはできず、会社の秩序に影響や支障が出るものは禁止できる考え方が示されているように思います。
次のことを整理したうえで、副業等を願い出て許可が必要だとしている(許可制にしている)場合は、届け出て支障がないかなどを確認するという届出制に就業規則を変更することも検討願います。
U.副業等を社員から届出をしてもらう
積極的に副業・兼業を推進する企業もあります。そのように推進する理由は、社員のキャリア形成や好きな仕事ができて働く意欲につながること、会社の本業に生かせる経験が得られること、社員の家計の事情への配慮など企業ごとに考え方が様々です。
実際に運用するにあたっては、競合企業でないことの確認や、社員1人が本業と副業で長時間労働にならないように、どのような副業を何時間行うのかを届け出でもらう制度にして、労働時間管理をすることが必要です。
V.労働時間の管理方法
厚生労働省は、働き方改革の施策関連から副業等を推進しており、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の中で、法定労働時間外の上限時間管理方法として「管理モデル」を提示しています。また、同時期に副業等を許可制から届出制に変更したモデル就業規則 (モデル就業規則とは、就業規程のモデル例ととらえて下さい)を公表しています。
ここで、気を付けなければならないものの一つに、労働時間管理と時間外割増の支払いがあります。労働基準法や通達では、一人が行う労働時間は、複数の事業所で働いているときは通算して管理することになっています。本業と副業の会社の2社がこの規制を守るために他社での労働時間を把握する必要があります。
● 時間外労働の上限については、自社と副業等の労働時間の合計時間が、月45時間、年間360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年間720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数平均80時間(休日労働含む)が限度になります。
A)原則的な管理方法
副業等の届出内容に基づき自社の所定労働時間と副業先の所定労働時間を通算し、時間外労働となる部分があるかを確認します。その結果、法定労働時間を超える部分がある場合は、この超えた時間が時間外割増支払い対象となり、時間的にあとから労働契約を締結した企業が自社の36協定で定めるところによって、その時間外割増払いをします。Aの管理方法は、労働時間を都度又は、1週間に1回など頻繁に把握する必要があります。
B)厚労省が示す管理モデルで管理する方法
管理モデルは、副業や兼業を始める前に、先に労働契約をしている会社、社員から見れば本業の会社と副業等を始める勤め先の会社のそれぞれの会社で働ける法定外労働時間をあらかじめ決めておくものです。法定外労働時間を2社で合わせて月間80時間以内にしておきます。そうすることで、他社における労働時間を頻繁に把握しなくても法定外労働時間の上限単月100時間未満はもちろんのこと、複数月平均80時間以内で管理できます。
詳しくは、厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で確認願います。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
W.10月の事務トピックス
1. 社会保険の標準報酬が定時(算定)決定で改定になります。
保険料天引きの変更をお忘れなく。(保険料が翌月天引きの会社は10月支払い給与から変更)
2. 最低賃金は、東京1,041円・大阪府992円に10月から改定されます。
3. 年末調整関係申告書書の配布と回収準備
給与計算を受託している会社様へは配布・回収時期を10月末ごろに連絡します。今年も早期提出にご協力願います。