ワンズライフコンパス株式会社
ワンズオフィス社労士事務所 発行人 大関 ひろ美
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この号の内容

  1. 仕事をしているときケガをしたら
  2. 作業手順を守らない被災でも減額されない
  3. オフィススタッフもケガをする

 

 

 

 

仕事をしているときケガをしたら

労働者が労災保険の適用される事業場に雇われて、 事業主の支配下にあるときに、 業務が原因となって発生したケガや病気等に対しては、労災保険から給付が行われます。よって健康保険は使えません。

ここでいう事業場とは、個人事業または法人を問いませんし、労災保険の適用になる手続きを出しているかどうかに関係なく、労働者を一人でも雇っている事業活動をいいます。 ですから、届け出を怠っている間におきたケガであっても、その労働者には療養補償給付などの給付が行われます。療養補償給付とは、治療にかかる費用が労災保険から払われるものです。

労働者が業務を原因として被ったケガ、 疾病または死亡 (以下 「傷病等」 )を、業務災害といいます。労災保険から給付を受ける給付申請は被災労働者自身が行い、労働者に直接給付があります。

では手続き関係に限って言えば、事業主がすることは何かというと、書面に書かれた傷病等の発生過程など、一定の内容に誤りがないと認めた捺印を行うことです。その申請書を労働者が病院や労働基準監督署に提出すると、被災労働者に給付が実行されます。もし、事業主が捺印をしない合理的な理由があるようなときは、事業主の捺印がないままでも給付申請書を提出することもできます。

作業手順を守らない被災でも減額されない

実際には、たまたま決められた手順を守らなかったことによる一瞬のミスで、不幸にも事故が起こることがよくあります。そうした場合であっても、本人が受けられる給付が減額されることはありません。しかし、わざと事故を起こしたとしたら、給付の対象になりません。

例えば、足場の上で作業する労働者が、足を踏み外して足場から転落し骨折したときを考えます。いつも決められた作業手順を守っていたのに、たまたまその時だけ、手順を無視したときに、事故が発生したり、ケガの程度が重くなってしまうようなケースです。

具体的には、図のように足場の上を移動するたびに、腰の安全帯を手すりにかけなおして歩くべきところを、面倒だと思って、省略したときに足を滑らせたような事例が代表的な例だといえます。

このように会社が決めた手順を労働者が守らなかったときに被災したように、本人に過失があってもその分を給付から相殺するような減額はありません。

ただし、事業主は、本当に手順を守るように教育を繰り返していたかどうかを問われ、安全な労働環境を提供することや、教育を継続することに不備があると、労基法・刑事・民事等で責任を問われることがあります。また、ケースによっては、被災した労働者や遺族に金銭的な保障をしなければならないことがあります。

オフィススタッフもけがをする

仕事を休まなければいけないような大きい業務上災害の原因は、高いところからの転落のようにケガが多くなっています。 では、主にオフィスや研究所の中で執務をする事務的または専門技術的なスタッフは業務上災害に遭遇しないかというと、必ずしもそうではありません。

身近な例とすれば、オフィスをサンダルで歩いていて足の小指を机の脚にぶつけて骨折する例も起こります。
また、労働者が就業時間中に職場で脳出血を発症し、入院して半年程度休むような疾病にかかることもあります。その労働者には持病があったのか、または業務に起因した疾病か否かを調べたうえで、労災の給付になるかどうかを個別に判断することになります。

業務上の疾病については、業務による有害因子によって発症したものと認められたときのみ、業務と疾病との間に因果関係が成立し、業務上疾病と認められます。
@有害因子の存在
A有害因子の量・期間
B発症までの経過 を労働基準監督官が調査をすることになります。

「脳血管疾患」や「心疾患」については、その発症に加齢、食習慣、生活環境などの日常生活要因や遺伝等により徐々に悪化するものですが、「過労死」と呼ばれるように仕事が主な原因で発症する場合もあります。 労災の補償対象になるか否かは難しく、個別に判断されますが、監督官の判断のずれをなくすためにも「過労死」等の労災認定基準が公表されています。

「脳血管疾患」や「心疾患」が 労災の補償対象になるか、そのひとつには、「労働時間の評価の目安」が出ており、長い労働時間は、疲労の蓄積をもたらすもっとも重要な要因と考えられています。また、労働時間は数値的基準で示すとこができるので、判断しにくい労災の可否において、評価の目安に取り入れやすい項目ともいえるでしょう。

具体的には、発症日を起点として1か月単位の連続した期間を見て、
@発症前1か月ないし6か月間におおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が低いと評価され、

Aおおむね45時間を超えた労働時間が長くなるほど、業務と発症も関連性が徐々に強なると評価されます。

B発症前1か月間におおむね100時間又は、発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は業務と発症の関連性が強いと評価できるとされています。
これらを踏まえて個別に判断されます。

大きな疾病は、労働者に後遺症を残すことになり、その後大変な苦労を強いることになります。また、事業主にも安全配慮をしていたかどうかによって責任を問われることになりますので、労働時間の長い職場では、適正な労働時間で高い成果をあげられるように対策を検討することが重要です。

労災保険給付をもう少し知りたいときは、こちら⇒⇒厚労省リーフレット「労災保険給付の概要」で 。