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「社員研修は給料を払う対象か」

  1. 社員研修は労働時間か
  2. 研修の法的性格
  3. 時間外の研修受講拒否した社員の懲戒解雇は無効とされた例

社員研修は労働時間か

 盛夏も過ぎ、そろそろ研修を予定している会社もあるでしょう。「今期後半の営業目標を達成するための宿泊研修を計画していますが、その時には賃金を払わなければならないのでしょうか。休日に予定しているので、時間外や休日の割増賃金を払いますか?」というような質問を受けることがあります。

 最高裁の判例では、労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。」とされた例があります。研修の時間が労働時間であれば賃金の支払い義務が発生します。ではもう少し、研修について考えてみましょう。

研修の法的性格  

”参加義務型で費用を会社が負担する業務研修を受講させれば労働時間”

 会社が社員に研修を開催するとき、どのような法律関係があるのかを考えます。社員に参加義務があるという法律的な権利義務関係であるのか、または社員の自主性に任せた自由参加なのかがひとつの判断要素です。 このどちらかによって、会社が参加を業務命令として指示でき、社員はこれに従うべきかどうかか違ってきますし、業務命令であれば賃金の支払いをしなければなりません。一方で、 業務命令できるかどうかについては、所定労働時間中に実施するのか否かも判断要素です。

 賃金の支払いについて通知をしてみると、「労働者が使用者の実施する教育、研修に参加する時間が労働時間とみるべきか否かについては、就業規則上の制裁等の取扱いの有無や、教育・研修の内容と業務との関連性が強く、それに参加しないことにより本人の業務に具体的に支障が生ずるか否か等の観点から、実質的にみて出席の強制があるか否かにより判断するべきものである。

(一部省略・・) 参加することについて就業規則上の制裁等の不利益取り扱いによる出席の強制がなく自由参加の者で有れば、時間外労働にはならない。」とした通知があります(昭26.1.20基収第2875号、平11.3.31基発第168号)。  

時間外の研修受講拒否による懲戒解雇は無効とされた例

"休日等に研修を計画するならば社員の同意を前提とすると考えるのが妥当"

 教育・研修が業務内容に密接に関連したもので、参加を強制したものであって、参加をしなければ制裁の対象になるものであれば、会社は開催費用を負担し賃金も支払うことになります。

 しかし、就業規則に定めた所定労働時間後の時間外や、休日に研修を行う場合は、その参加を拒否したからと言って懲戒解雇にできるわけではありません。会社が時間外に安全教育講習会を実施したとき、社員が参加しなかったために懲戒解雇をしましたが、裁判で無効にされた例があります。

 組合支部長が出した「教育のための時間外労働拒否命令」に基づき自ら参加を拒否した社員の懲戒解雇が無効とされました(横浜地裁川崎市支判昭47.4.10)。この判決では、「会社は安全教育の受講対象者に対し、時間外で安全教育を実施する申し込みをし、その同意を要するのであって、一方的に対象者に対し時間外安全教育の実施、その出席受講を命じても、右対象者にはその命令に従うべき義務はないと言うべきである。」とされました。

 個別のケースごとの判断になる余地はあるものの、所定労働時間外に行う研修への参加強制は限界があると考えるのが妥当ですね。