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「本人の同意のない賃金2割減額が無効に」

  1. 合意による労働条件変更とは
  2. 賃金は書面で明示しなければなりません
  3. 裁判で注目する概要
  4. 減給は同意をとってできるだけ書面にする

業績悪化を理由に役職者の賃金を引き下げた 時点で同意がなく、および事後においても本人の追認を得なかった減給は、無効とされた判決がありました。

合意による労働条件変更とは

そもそも賃金をはじめとする労働契約の内容である労働条件を変更しようとするときは、当事者の同意が必要です(労働契約法第8条)。
ただし、合理的な就業規則の変更と周知が行われたときには、本人の同意がなくても労働条件を変更できることがあります。
そのためには、

  1. 労働者が受ける不利益の程度
  2. 変更をしなければならない必要性
  3. 変更後の就業規則の内容の相当性
  4. 労働組合等との交渉の経緯

などの事情を総合的にみて、就業規則の変更が合理的なものになっている必要があります。
また、就業規則の変更をしても、個別の労働条件を変更しないと約束をしていた特定の労働者については、就業規則の変更をもって労働条件の変更することができません。
これらは労働契約法に定められています。

賃金は書面で明示しなければなりません

労働条件の中には、賃金をはじめとして必ず労働者に明示しなければならならず、また書面で明示しなければならない項目があり、賃金は書面で明示することが必要です。

裁判で注目する概要

毎月行われていた社内の代表者会議で、会社は業績の悪化を理由に役職者全員の賃金を20%の減額にすると提案しました。
翌月に行われた代表者会議では、会長が減額に応じるように強く求め、「了承をしないものは会議に参加しなくてもよい」と告げました。
これに対して、原告の一人は反対意見を述べましたが、退席はしませんでした。実際その月の 給与から20%減額された給与が払われ、原告が減給の取り消しを求める請求をしました。

減給は同意をとってできるだけ書面にする

裁判では、「合意された内容をできるだけ書面にしておくことが望ましいことは言うまでもなく、就業規則の変更によらない労働条件の減額は、労働者の承諾が必要であり、書面がないのであれば、労働者が黙示の承諾をしたという事実が 必要である」とし、この裁判においてはその黙示の承諾があったと認められないために減給は無効とされました。

(技術翻訳事件 東京地裁判決 平 23.5.17)

減額前の賃金額やほかの労働条件がわからない状況ですので、詳細を検討してみなければなりませんが、2割程度の減額の是非や、減給をするならば合理的な説明と個別に合意が必要であり、なおかつ合意内容は書面化しておくことが後々のトラブルの防止につながるという、教示的な事例だと思います。