この号の内容
- 対象は500人超の適用事業所
- 企業の手続き2パターン
- 雇用契約書等で加入を判断
- 新しく被保険者になるパート等の要件
対象は500人超の適用事業所
平成28年10月1日から、社員の数が比較的多い企業では、パート等の短時間で働く人で厚生年金と健康保険(以下は、社会保険といいます。)の被保険者になる対象範囲が拡大されます。
今回の改正は、厚生年金被保険者が500人を超える適用事業所が対象です。被保険者の数は変動するものですので、500人かどうかをどのように判断するかというと、
●法人番号が同じ適用事業所で被保険者を合計し
●1年で厚年被保険者が500人以上を超える月が6か月以上あることが見込まれる
企業をいいます。
以上の要件に該当しない500人以下の企業は、当面は対象範囲拡大の対象になりません。
企業の手続き2パターン
10月の改正に伴う企業の手続きは、10月1日現在で厚生年金の被保険者が500人を超えているかどうかで異なります。次の2パターンに整理しておきたいと思います。
【A】 被保険者が500以下の企業
パート勤務の配偶者や親などを被扶養者にしている社員がいる場合は、影響があるかもしれません。社員の被扶養者となっている配偶者等が、10月の改正によってご自身の勤務先で社会保険の被保険者になる場合は、社員の被扶養者から減員する手続きが必要です。
*注意点
健康保険の被扶養者となれる家族の収入要件は、変わりません。
年間収入130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入※180万円未満)かつ
同居の場合 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
別居の場合 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
ですが、家族の収入がこの要件の130万円未満等であっても、家族がご自身の勤務先で社会保険の被保険者になる場合は、社員の扶養者から減員する手続きが必要です。
【B】 被保険者が500人を超える企業
今回の改正は、コストアップを伴う重要な案件ですから、すでに対応が進められていると思いますが、パート等で新たに被保険者になる人は、改正と同時に資格取得手続きを行う必要があります。そして、被保険者が増えることによって、社会保険料の会社負担分が増加しますので、法定福利厚生費の上昇を考慮しておかなければなりません。
それに加えて、パートの配偶者等を被扶養者にしている社員がいる場合は、【A】の手続きが必要です。
雇用契約書等で加入を判断
パート等が社会保険に加入するかどうかは、雇用契約書等で判断します。これまで都内の年金機構の窓口では、タイムカード等の勤務実績で労働時間や労働日数を判断していましたが、今後は雇用保険の加入要件判断と同じように雇用契約書等や就業規則で確認することになるようです。ですから、これまで以上に入社時点で実態に合った雇用契約書を作成し契約をすることが以上に重要になります。
一方で、パートの中でも従来のいわゆる4分の3以上働けば社会保険に加入するルールに該当していた人たちは、今後も企業の規模にかかわらず被保険者になります。
しかし、少し改正があります。これまでの年金事務所の内部ルール(内かんという内部ルール)で「正社員と比較しておおむね4分の3以上働く人は被保険者になる。」としていたものが、明確に法律に規定されて判断基準が次のようになります。
●10月以降は、『1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が正社員の4分の3以上働く人は社会保険に加入する。』ときちんと法律に規定されるようになりました。
所定労働時間は1週で判断して、労働日数は1か月で判断するというのは、なかなか一般的には覚えにくい規定になりますね。 迷ったら、どうぞご相談ください。
新しく被保険者になるパート等の要件
さて、10月からパート等が社会保険に加入する人が拡大されるのは、500人超の企業で働いており、正社員の4分の3までは長く働かないが、1週間の労働時間は20時間以上働く人等の5つの要件に該当する人です。 要件が5つありますから、複雑な基準だというのが正直な感想です。
また、この改正の趣旨は、新しく社会保険に加入することで、本人が高齢や障害になったとき収入に応じた厚生年金が受け取れるようにし、福祉の向上につなげようとするものと言われています。また、保険料を負担する人を多くして、財源の安定にもつながる改正です。
では最後に、新しく被保険者になる人の5つの要件の概要は次のとおりです。
1) 週の所定労働時間が20時間以上
まず、その人が通常勤務する時間を就業規則や雇用契約書等で確認します。
1か月単位で所定労働時間を決めている人は、1か月の労働時間×12か月÷52週で計算し1週の所定労働時間を確認します。
2) 雇用期間が1年以上
期間を定めない雇用や、雇用期間が1年以上の人が対象です。ただし、雇用期間を1年未満と明示しても、契約が更新される可能性があると明示されている人は、雇用期間が1年以上だと判断されます。
3) 賃金が8.8万円以上
時間給、日給等を月額に換算し、いわゆる所定内賃金の手当を加算した額が8.8万円以上の人が対象です。判断の際に除外するものとして、賞与、時間外労働手当、休日や深夜労働手当、通勤費、家族手当が明示的にあげられています。
ただし被保険者になった時の標準報酬月額を決める計算は、これまでと変わりなく、諸手当や通勤費なども報酬にいれますので、間違えないようにお願いします。
4) 学生でないこと
大学生、高校生、各種学校の学生は雇用保険と同じく社会保険の被保険者になりません。
5) 厚生年金被保険者が500人を超える適用事業所で働く人が対象です。
以上、H28・5・13保保発0513第1号、年管管発0513第1号より抜粋しました。