この号の内容
- 改正育児介護休業法がはじまる
- 改正点の概要
- 介護休業制度のニーズ把握
改正育児介護休業法がはじまる
2017年1月から育児介護休業法が一部改正されます。今回は、主に仕事と介護を両立しやすい環境つくりを目指しています。介護休業等は、1995年に育児休業法に介護休業等の定めが付け加えられましたが、それ以来初めての大幅な改正です。
私の顧問先の企業には、8月ころから介護休業等に関する規程の改正の相談を進めてきましたが、社員が家族の介護などライフイベントと仕事を両立して退職せずに働いてほしいという思いは、その企業も同じで、規程の改正はひと段落したところです。
ただし、企業が介護休業を積極的に推進することについては、総じていえば企業間で温度差があり、通常の有給休暇の取得状況と比例して、介護休業を推進するかどうかをとらえる傾向があるように感じました。
改正点の概要
今回の改正を概要のみ列挙してみます。
変 更 点 | 変 更 前 と の 比 較 |
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介護休業は、介護対象家族1人につき、3回を上限として、通算93日まで分割して取得できる。 | 介護休業ができる日数に改正はないが、分割取得が可能になりました。 |
介護休暇は半日単位で取得可能になった。 | 介護対象家族1人につき年間5日であることに変更はないが、半日取得可能になった。 |
介護のための所定労働時間の短縮は、介護休業とは別に3年間の間で2回以上の利用が可能になり、大幅に期間が延びた。 | 改正前は、介護休業と所定労働時間の短縮の合計日数が93日であった。 |
所定外労働時間の免除を介護終了まで請求することが可能となった。 | -- |
有期契約労働者の育児と介護休業取得要件を緩和する。 | ・介護休業は、過去1年以上雇用されており、介護休業予定日から起算して93日を経過する日から6か月までの間に雇用契約が終了しないことに緩和された。
・育児休業は、子が1歳6か月に達するまでに労働契約が満了し、更新されないことが明らかでないことに緩和された。 |
介護休業等の対象家族の同居扶養要件がとれ、配偶者・父母・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫となった。 | 左記のうち配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫は同居でかつ扶養が要件であった。 |
育児・介護休業等に関する就業環境を害する行為(ハラスメント)防止策を講じることが義務になった。 | これまでも不利益取扱い禁止が禁止されていたが、育児休業取得者へのハラスメント裁判事例等を踏まえ、防止の策定を義務にした。 |
介護休業制度のニーズ把握
1月以後は、介護休業ができる日数が、介護対象家族1人につき、3回を上限として、通算93日まで分割して取得できるようになります。介護は多くの場合が、育児と違って予定が立てられない現実があります。社員が一人で介護を支えることになると、離職につながり生活の糧も途絶えてしまいます。
通算93日間は、介護が必要となる初期に使い介護体制を整えることや、分割取得が可能となったことで、終末期に休業を取得することを想定し残しておくことができます。
有給休暇を取得して介護にあたる社員も多いと思いますが、介護休業をとれることを企業がPRしておくことで、理由のはっきりしたお休みが取りやすいこともあります。これまで介護休業が普及しなかった理由は、調査によると取りにくさに原因があるようです。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると、企業の仕事と介護の両立支援として重要と考えるものの一つに、「従業員の仕事と介護の両立に関する実態・ニーズを把握すること」をあげる企業が多くありました(仕事と介護の両立に関する企業アンケート調査H24年度厚生労働省委託調査)
また、2017年1月からは、介護休業給付も改正となり賃金の67%相当で通算93日まで給付になります。
今回の法改正は、社内規程の改定と同時に社員のニーズを聞き取ることの良い機会にできるのではないかと思います。