この号の内容
- 最低賃金は平均25円アップ予定
- 抵触しないかのチェック方法
- 今後の見通し
最低賃金は平均25円アップ予定
厚生労働省は、平成29年度の地域別最低賃金額の都道府県別最低賃金改定額の答申内容を公表しました。
今後は、都道府県労働局で関係労使からの異議申立て等を経て、都道府県労働局長の決定により、9月30日〜10月中ごろまでに金額と改定時期が発効される予定です。
【1】答申内容のポイント
1.改定額の全国加重平均額は848円(昨年度823円)。
2.上げ額は、22〜26円の引き上げ額(昨年度24円)。
3.最高額(東京都958円)に対する最低額(高知県等8県737円)の比率は、76.9%(昨年度は76.6%。なお、この比率は一昨年度から3年連続の改善)
【2】最低賃金答申額の上位県
順位 |
都道府県 |
答申の最低賃金額(円) |
H28年度の金額(円) |
1 |
東京 |
958 |
932 |
2 |
神奈川 |
956 |
930 |
3 |
大阪 |
909 |
863 |
4 |
埼玉 |
871 |
845 |
愛知 |
871 |
845 |
|
全国加重平均額 |
848 |
823 |
抵触しないかのチェック方法
賃金の支払い額≧最低賃金額となっていなければなりません。 そこで、アルバイト等で、時間給に労働時間を乗じて支給する人であれば、その時間給を確認すればよくチェックの仕方に迷うことは少ないと思います。
月給の社員が、最低賃金に抵触して否かを確認するには、時間給を割り出す必要があります。次の賃金は参入しませんので、これらをいれずに合計額を計算し所定労働時間で割ります。例えばBの時間外手当等を定額払いしている場合や、Eの通勤費や家族手当も含まずに計算しますので、ご注意ください。
@臨時に払う賃金(結婚手当等)
A1か月をこえるごとに支払う賃金
B時間外手当等所定労働時間を超えたときに払う賃金
C休日割増手当等の所定労働日以外の労働に対して払う賃金
D深夜勤務手当
E皆勤手当、通勤手当および家族手当
今後の見通し
最低賃金は、これまで引き上げを続けてきました。2014年10月の最低賃金引き上げで生活保護の水準との逆転現象は解消した。と厚生労働省は説明しています。ただし、賃金を得ている労働者が社会保険や税金を負担したあとの手取り額と、生活保護受給額をどのように比較するかは、なかなか難しい比較になります。
最低賃金は、地域別の生活費及び賃金並びに事業者の支払い能力を考慮して決める(最賃法9条2項)とし、その後に、労働者が文化的で最低限の生活を営むことができるよう配慮する(最賃法9条3項)と併記されていますから、各種の統計値に加えて、文化的な生活水準等が考慮されるようになっています。よって後半の部分は政府の考えが反映されることになります。
2017年11月の安部総理の経済財政諮問会議での発言を見てみると、
「名目GDPを2020年頃に向けて600兆円に増加させていく中で、2016年12月の政労使合意に沿って賃金上昇等による継続的な好循環の確立を図るとともに、最低賃金についてもこれにふさわしいものとしなければなりません。そのためには、最低賃金を年率3%程度を目途として、名目GDPの成長率にも配慮しつつ引き上げていくことが重要であります。これにより、全国加重平均が1,000円となることを目指します。」と発言しています。
政府の動きは紆余曲折あると思いますが、平均賃金が1,000円になることを想定したうえで、企業は生産性の向上を考えていかなければならない。さて、皆様いかがお考えでしょうか。