T.テレワークと事業場外みなし労働時間制
テレワークとは、出社をしない働き方として、長くつかわれて聞きなじみのある言葉だと思います。最近は、フリーランス等で働く人も含めてリモートワークという言葉も聞かれますが、今回はテレワークと表現することにします。
テレワークとは、「情報通信機器を活用し、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」で、「tele=離れた場所」と「work=働く」を合わせた造語とされており、在宅勤務、モバイル勤務、サテライトオフィス勤務等などがあります。(日本テレワーク協会*)
このテレワーク協会の解説によるテレワークは、「場所や時間にとらわれない働き方」となっていますが、時間を把握する必要がないのかというとそう簡単ではありません。労働行政では、労働時間による賃金の支払いを求めているために、一定の手続きをふまなければ、労働時間の管理を行うことが基本になっています。
経緯を振り返ると、現在の労働時間管理は、日本の工業化以来、労働者が工場に同じ時間に出勤して作業を開始し、終業時刻のベルとともに労働時間を終了した時代の延長にあるように思います。その時代であれば、労働時間の把握が容易で、その時間が、そのまま仕事ととらえられていましたが、現在は一定の業種をのぞいては、仕事を労働時間ではかることが必ずしもベストではなく、しかし、労基法を遵守して通達等にも配慮する必要があって、運用面で葛藤があることも確かです。
さて、なかなか導入が進まなかったテレワークでしたが、新型コロナウィルス感染症対策で、テレワークを緊急的に取り入れて、その後継続している企業もあります。また、感染症第3波の襲来で、これから再度テレワークの日を増やすところもある気配がありますので、改めてテレワークと労働時間管理を取り上げたいと思います。テレワークに事業場外みなし労働時間がなじむのでしょうか。
事業場外みなし労働時間制とは、全部または一部の時間に事業場外で勤務して労働時間を算定し難いときは、あらかじめ決めておいた労働時間を働いたとみなす(労基法第38条の2)制度です。担当している仕事を完了するために何時間かかるかをあらかじめ決めておきます。例えば1日8時間と決めておくと、テレワーク中の労働時間が把握できないけれども8時間働いたとみなすことになります。
なお、事業場外みなし労働時間制には、「事業場外で勤務して労
働時間を算定し難いとき」という要件がついています。
労働時間を算定し難いときとは、(労基法ではありませんが)行政解釈が出ており、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」によると、テレワークにおいては、
1 情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態におかれていないこと(pcなどを通じて使用者が出した指示や呼びかけに即応しなければならない状態でないこと等)
2 随時使用者の具体的指示に基づいて仕事を行っていないこと
となっていますので、テレワーク中、例えば常時アプリ等を立ち上げて上司とつながって、返答を送信することをルールにしているにもかかわらず、事業場外みなし労働時間制で運用していたとしたら、行政から事業場外みなし労働時間制の適用を否定される指導の対象になる可能性が高いと思います。この場合は、労働時間を把握して賃金を支払うことになります。
また従来、テレワークを行った日については、業務日報の提出を毎日義務付けている企業が多くありました。この業務日報の提出によって労働時間の把握ができるような場合についても、事業場外みなし労働時間制で運用することは難しく、行政から否定される指導の対象になる可能性が高いと思います。
生産性が上がるテレワークとは、業種や担当している業務によりますが、業務の課題を与えて成果を求め自律的に労働してもらうことが適切だとしたら、労働時間を把握せずに事業場外みなし労働時間制を適用することが適していると思います。一方で、会社へ出社したときと同じ始業時刻と終業時刻で働くことで生産性が上がる業務であれば、労働時間をしっかり把握する労働時間管理の運用のほうが適していると思います。
どのような業種にテレワークを行って、時間管理をするのか、それとも労働時間を把握せずに柔軟な働き方を運用するのかを考えていただく参考になればと思います。
日本テレワーク協会のページには関連情報の掲載があります。
https://japan-telework.or.jp
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