この号の内容
- 防止!!書類作成のうっかりミス
- ミスの本質
- ミスのパターン
"人的ミスは起こるもの。そのパターンを分析してミスを防止 "
防止!!書類作成のうっかりミス
今月号は、いつもと少し違って日常業務の書類作成ミスを繰り返さないことを考えてみたいと思います。
2月といってもまだ寒い日、アポイントまで少し時間があったので、本屋で時間つぶしをしていたとき、「うっかりミスの防ぎ方」という本が目にはいりました。
手にとって目次を読むと、「なるほど、納得する」と思える項目が多くあったので購入しました。この本は、公認会計士さんが企業の決算書類を確認するときに出くわす決算書類作成ミスを分析している本ですが、社会保険労務士の書類作成や給与計算にも応用できると思ったのです。
そして、実は書類を作るあらゆる仕事にも応用できるエッセンスがあり、是非お伝えしたいと思い今回のテーマにしました。
*参考本 うっかりミスの防ぎ方 石王丸 周夫 清文社
ミスの本質
さて少し著者の言葉を借りると、ミスの背景には、おおよその人に共通したものと作業者固有のものがあり、しかし、どちらの場合にも「楽をしたいという心理」が背景にあるといいます。
例えば地下鉄表参道駅の乗り換えをイメージしていただきましょう。
通勤ラッシュの混雑時に横幅の広い階段がすいていたならば、多くの人は迷わず階段を上がるけれども、昼間の営業訪問で人が少ない時間に表参道駅で乗り換える時には、エレベーターを使っている。 そして、よほど急いでいなければ、エレベーターを駆け上がる人はほとんどおらず、おそらくエレベーターで異動するというよりも休息しているようだと。
多くの人は、ひととき休むことができる楽な行動をとってしまうのだろうと著者は書いています。
こうした楽をしたい心理が、ミスにつながることになると言います。
さて、私の仕事でも給与計算を受けることがあります。会社によっては、これまで社内で計算していたものが、何かの理由で手が回らなくなって計算実務を代行してほしいというご依頼があります。そうした場合、おおよそ1年間分さかのぼって計算結果とそれに付随する社会保険等の届け出書類がきちんと提出されているか確認をします。
そうするとやはりミスが見つかることがあります。また一方で、私自身も半年以上たって過去の書類作成のミスに気付くこともあります。言うまでもなく人間の作業にミスはつきものなのですが(決して自分のミスの言い訳ではなく)、できる限りミスを防がなければなりません。
例えば、社会保険の提出書類であれば、社員の社会保険給付に誤りが出ますし、年金機構への正しい届け出義務が果たせません。
こうしたミスを防ぐには、ミスのパターンを分類して対策をとることが大事です。そんなことは、わかっているけれどもなかなか整理して認識しないところにも、「あとで考えよう・・」という人が楽をしたい背景があるようにも思います。
ミスのパターン
ここでは、著書が分類しているパターンを一部引用して、給与計算のミスを例に分析します。
- リサイクル・ミス
- アップデート・ミス
- ファーストタイム・ミス
- フルコピー・ミス
- 本当のうっかり・ミス
いわゆる使いまわしのミスです。給与集計をエクセル表で集計している会社が、先月のシートに今月の変更値を入力訂正して集計するとき起こるようなミスです。前回の値が残ってしまっている。初歩的なミスの例は、○月分給与集計表という表題さえも更新を忘れることがあります。
→→防止法:同じシートを使いまわすときは、更新しなければならない値のセルを空白にしたシートを原紙として用意しておくことが考えられます。そしてもし、先月のコピーシートを使うならば、更新しなければならない値を全部消してから、入力を始めるとずいぶんミスが減りますね。
複数の書類を複数の人で作成しているとき起こるミスです。人事が給与集計表を完成した後に訂正を加えたとき、経理に振込額の変更を伝え忘れるようなミスです。
→→防止法:一連の作業が滞りなく自動で進むようにソフトやシステムの自動化で補っておけばよいのですが、そうでなければ、これは担当者間の連絡を忘れずコミュニケーションをきちんと行うルールを徹底する、もしくは、全体をよく見渡せる責任者が最終確認をするのが基本ですね。
このミスは、新しい制度の運用を始めたり、新しい取引(給与では新人)の書類を作成するときに間違えることです。健康保険料は例年3月に、厚生年金は9月に変更しますし、今年の1月から復興特別税の徴収が始まったのは記憶に新しいですね。
→→防止法:関連する制度の改正情報を十分収集しておくことが必要です。また、新人の給与支払いや諸手当の新規支払いなどは、そもそもミスをしやすいという前提でチェックシートを作り複数の人で確認することが必要ですね。
標準的な文例や他社の事例を丸写しして、適正でない書類を作成してしまうようなミスです。この方法を就業規則の作成に使ってしまうと最悪です。例えば、結婚特別休暇を用意していない会社が「ひな形の就業規則には規定されていた」というだけで運用してしまっていると、休みを与えてよいものかどうか社内で混乱が起きますね。
→→防止法:最終的に整合性をよく確認する。全体をよく見渡す。しかるべき第三者に確認を依頼するような慎重な対処が必要ですね。
667,787円を667,678円と入力してしまうようなミス。わりとやってしまいがちなミスです。
→→防止法:数字にはカンマを入れる。そして、数字をインポートしたり、コピー・ペーストした場合は、必ずもとの表の縦集計・横集計と入力後の縦横集計値が合致するか確認をするなどが必要ですね。この検算は(人は楽をしたいから)なかなか習慣にできないのですが、かなりミスを防げます。
紙面の都合で今回は簡単に記載しました。人はミスをするのだと認識して、過去のミスの事例を分析して、起こりうるミスを防ぐことはとても有効です。機会をみて具体的な例を紹介していきたいと思います。
最後に、今回の記事にミスがないことを願っています。私の原稿ミスはさておき、社内でミスを見つけた時は、ミスを指摘することは仕事上大変重要なことです。しかし、ミスをした人をジクジク責めるようなことはマナーとしてやめるべきです。ミスをしない防止法を一緒に考えるようにしたいものです。
"楽をしたい心理"が誰にでもあることを認識しよう。