ワンズライフコンパス株式会社 ワンズオフィス社労士事務所 発行人 大関 ひろ美
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この号の内容

  1. 採用内定の取消しトラブルになるときとは
  2. 大学新卒者採用予定者の内定取り消し
  3. 中途採用予定者の内定取り消し

”新卒者に内定通知を出したあとの取り消しは、あらかじめ約束していた内定取り消しする理由が起こっているかどうかと、合理的な理由なのかを慎重に。また学生の今後を誠意もって検討する"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"社会経験者の内定取り消しは、金銭解決をした裁判例もある"

採用内定の取消し トラブルになるときとは

 例えば、企業勤務経験がある人を募集し、採用に向けて交渉をしている過程で、当初は優れた人材と思った場合でも、面接を重ねるうちに求める人材とかけ離れているとわかってくるときがあります。

 こういったケースで、応募者が採用に対して相当の期待をしており、また採用される心づもりで現在の勤務先に退職を申し入れていたような場合、なかなか内定を取り消しにくいことになります。

 心情的に断りにくいということもありますが、そこは採用基準にブレが出ないよう決断し、不採用を伝えたいものです。さて、その後、採用されなかった応募者が、採用されなかったことに対して金銭などを求めてくることが想定できます。ではこの求めに会社は応えなければならないのでしょうか。

 一般的には、会社が年収の提示など具体的に労働条件の交渉に入っており、すでに採用について口約束をしたような場合は、会社が内定を出していたと解釈されことがあります。内定を出したかどうかの明確な基準はありませんが、口頭でも採用を明確に約束した場合には、内定を出したと解釈されると考えておくことが肝要です。

 よって内定を取り消された応募者が、約束された採用の内定取り消しは不法行為による損害賠償だと考えることは、理論的に成り立つことになります。

 また、不法行為ではなく、契約責任を会社が果たさなかったと解釈がされれば、債務の不履行を理由とする損害賠償責任請求もできないわけではないとされています。

大学新卒者採用予定者の内定取り消しについて

 内定を取り消された大学生が、民法の不法行為や債務不履行などによって、損害賠償を求める裁判を起こした場合には、内定者が損害賠償を被った事実を立証しなければなりません。そうするとそれほど大きな金額の損害賠償が認められないと考えるのが一般的です。

 大学生で新規卒業の応募者採用のケースであれば、就職活動を再開しなければならず、他の学生よりもかなり出遅れてしまうわけですから、将来を考えると大きな不利益となります。

 そのため、新卒者に採用内定通知を書面で出していれば、労働契約が成立しているという考えがあります。労働を開始していないけれども、すでに労働契約が成立していて、その労働契約の終了であり、そもそも解雇の制限がかかってくると解釈した裁判の例があります。

 そうすると労働契約法の解雇の制限である第16条の「解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」という制限が適用されます。

 ただし、解雇の制限については、入社日までは労働を開始していないことを考慮して、労働を開始しているときのようにそれほど厳密ではないとも考えられます。一般的には、新卒者に書面で出した内定通知を取り消すケースにおいては、内定通知であらかじめ合意していた「内定を取り消す理由」に該当するような事由が発生していることなどが必要になってきます。

中途採用予定者の内定取り消しについて

 内定段階でも労働契約の解約として、解雇権濫用法理を適用し、合理的な理由があって、社会通念上相当な場合に内定取り消しができるという考えもあります。

 しかし裁判の例を見ていると、中途採用者の場合は新卒者と少し異なった考え方をする傾向があります。

 内定段階で労働契約が成立したとまで認めず、解雇の制限をもちだすことまで考えなくてもよいとするものもあります。 会社が不当な内定取り消しをしたことの解決は、損害賠償で十分であると考えられなくもないという解釈をしているものがあります。

 では、どれくらいの損害賠償を支払うケースがあったのかということを裁判の例で見てみます。長い期間では、次の会社の再就職までの7か月半の賃金相当の支払いを認めた例があります。

 「最初の配属先が限定されており、その配属先の変更を否定したことを理由とする採用内定の取り消しは不法行為に該当するとして、慰謝料165万円(転職までの7か月半の失業期間の賃金に相当する額)の支払いを認めた。 東京地判平成15年6月30日」(大内信哉著 労働法実務講座 第二版 日本法令より引用)

 そもそもの話で恐縮ですが、採用後の長い期間の労働契約をするわけですから、応募者にとっては、大切な就職の機会ですし、会社にとっては、貢献が期待できる人材を選びたいわけですから、慎重に選考しなければなりませんね。