この号の内容
- 労働基準監督官って
- 送検されると
- 違反事実が拡散し招く結末
労働基準監督官って
労働基準監督官は、労働基準法や安全衛生法がきちんと守られているかを事業主に指導し、その指導等に実行性が持てるように、違反について調査や罰則を求めることができる司法警察官の職務を担っています。
今月は、労働基準監督官について書いてみようと思います。連休のはしりに労働基準法を違反する事業主の話を持ち出して恐縮ですが、お付き合いください。
仕事柄、私が労働基準監督署に出かけるときは、書類を提出する目的であることがほとんどです。
さて、近ごろ監督署で見かけるのは、個別の労働問題を相談に来ている労働者と思われる人です。仕切られたブースで何組かの相談ごとが行われています。
私は書類の提出に出かけて、受付の順番待ちをしているわけで、手持無沙汰にしていると衝立で仕切られた向こう側で話している内容が聞こえてきます。個人的には、もう少し他人に聞かれないような配置が必要ではないか。と思うこともあります。
さてこのように、労働者が個別に相談に行き、監督署内部で、事業所への調査が必要だと判断されると、会社の人事部門に何らかの連絡が入ります。事情の調査に応じるように呼び出されたり、場合によっては、労働基準監督官の立ち入り調査(法101条臨検監査)があります。
会社にやってくる監督官は、次のような権限を付与されています。
1)事業場、宿舎その他の付属建物に臨検する権限
2)帳簿及び書類の提出を求める権限
3)使用者若しくは労働者に尋問を行う権限 です。
こうして行われた調査の結果、是正勧告や指導がされた場合は、改善の報告をしなければいけません。
しかし、調査に応じなかったり、たびたびの是正勧告等に改善せず、あるいはウソの報告をする等のように対処に問題があるケースもあります。
そのようなときで、監督官等が悪質と判断すると、送検の手続きを行うことがあります。
多くの場合は、労働者ともめるようなことになる前に、どうにかできたチャンスは何度もあったと考えますが、調査にまでなったような事態ならば真摯な対応をすることが必要なのは言うまでもありません。
送検されると
監督官によって悪質等と判断され、検察庁に送検をされると、検察庁では、起訴、不起訴処分、略式手続などが行われます。
検察庁が裁判所へ起訴すると決めた時は、裁判所において有罪となれば、懲役または罰金となります。ケースによっては、公判を前に罰金または科料を科せられることもあるそうです。
参考文献:日本法令 未払い残業代の問題解決の実務
違反事実が拡散し招く結末
たとえば、労働基準法の違反のひとつに「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」があります。この話をすると、罰則を軽く見る使用者がおられますが、違反の事実は世間に広まります。本業の運営にも支障がありますし、これから応募してくる社員への反響も大きいでしょう。
そして何よりも、社員の多くが本来の力を発揮して仕事に臨む環境が損なわれる結果は、どなたも想像ができると思います。
送検されるようなケースは、件数が多くないようですが、一方で氷山の一角であるようにも思います。労働基準法の内容は守るものであり、労使で信頼を重ねていくことが、事業の継続と発展を守ることにつながると思っています。