ワンズライフコンパス株式会社 ワンズオフィス社労士事務所 発行人 大関 ひろ美
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この号の内容

  1. 精神障害で労災認定の請求数増加
  2. ストレスチェックの実施が法制に
  3. ストレスチェック受診を命令できるか

”健康情報の扱いについては「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を扱うに当たっての留意事項について」に基づいた適正な取り扱いが必要です”

"ストレスチェック検査は労働者へ義務化されませんでした”

精神障害で労災認定の請求数増加

 平成25年度の精神障害と脳・心臓疾患による労災認定件数が、6月27日に公表されました。請求件数は、1,409件で、前年度比152件の増となり、過去最多です。 ただし、支給決定件数は436件(前年度比39件の減)で、4年ぶりに減少しまた。(厚生労働省の資料より引用図2-1を参照)

申請認定数

 どの業種で請求した人が多いかといと、請求件数は「製造業」249件、「医療,福祉」219件、「卸売業,小売業」199件の順に多くなっています。そして労災として支給決定された件数では「製造業」78件、「卸売業,小売業」65件、「医療,福祉」54件の順に多くなっています。

 労災の精神障害の認定については、発症前の業務による心理的、精神的な付加や、労働時間の長さ及び上司の配慮を含めた労働環境などを総合的に考慮して判断されることになっています。

ストレスチェックの実施が法制に

 精神障害の労災認定件数が増加していることもあり、精神疾患の予防対策を政府が進めているところです。その一つとして、労働者の心理的な負荷を医師、保健師等(*)によるストレスチェック検査の実施を企業が行こなうことが義務化される法改正が成立しました。具体的には労働者がリスト等でセルフチェックをした結果を医師等が判断することを想定しているようです。ただし、労働者50人未満の企業は、事業者の負担を考慮して実施が努力義務にとどまります。

 さて、ストレスチェックを実施した事業主は、労働者の希望に応じて医師による面談を実施し、その医師の助言を聞いたうえで、担当職務の軽減や配置転換を行う措置を講じなければなりません。

 心理的な負荷が高まっている労働者の中には、その状況を事業主に知られたくないという人もいることに配慮しなければなりませんから、ストレスチェックをした医師等と面談をした医師は、労働者の同意を得なければ事業主に検査結果を開示しないなどの規定ももうけられています。

(*)ストレスチェックは、医師、保健師、一定の研修を受けた看護師、精神保健福祉士が含められる予定です。その後に労働者の希望によって行われる面談は、医師が行うことになりそうです。

ストレスチェック受診を命令できるか

 法改正が成立する前に訂正が入ったものの一つに、ストレスチェック検査を望まない労働者に義務的に受けさせる規定が削除されたことがあります。では、事業主が就業規則でストレスチェック検査を受けることを定めていた場合で、それでも拒否した場合、業務命令で受けさせられることができるでしょうか。これについては、労働者の健康障害を予防するための具体的な必要性があると認められれば、業務命令として指示できることになる余地があると思います。

 過去の判例では、労働者に指定病院での受診命令を拒否したことなどを理由に懲戒処分をしたことを有効にしたものがあります。(電電公社帯広電報電話局事件)

 また、労働者が健康を損ない事業主に損害賠償請求をしたとき、ストレスチェックを受けなかったために精神の健康状況を把握できなかったことを理由に、事業主の安全配慮義務違反の程度を軽くしてほしいと主張できるのでしょうか。過去の例では、精神科に通院をしていることを事業主に告げなかったことを事業主の過失相殺として認めなかった例があります(東芝うつ病・解雇事件)。

 事業主は、本人から体調に関する訴えや、ストレスチェック検査の結果を知る機会がなくても、日常の労務管理において、労働者の不調に気がつくことができたのではないかという判断がされ、安全配慮義務が求められると心得ておかなければなりませんね。