この号の内容
- 女性活躍推進法が成立
- 基本方針と事業主の義務
- 事業主行動計画の策定
- 制度運営の予測
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律成立の背景
2015年8月28日に女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(以下、女性活躍推進法といいます)が成立しました。これは、政府の成長戦略のひとつに「人材の活用強化。女性が輝く日本」が掲げられており、その取り組みのひとつに位置付けられているものです。
日本では、妊娠前に働いていた女性の62%が第一子の出産前に退職しています(*1)。
ただし、皆さんご想像のとおり、女性がどのような職業選択をするのかは、自身の意思によるものです。もし、結婚や妊娠や出産などのライフイベントを迎えても仕事を続けていこうと決める女性がいれば、活躍を阻害する要因を減らしていくことを政府が率先していこうということのようです。
そして、能力開発など組織内で育成する体制を検討し、指導的立場に立つ女性を増やしていきたいということも含められているようです。
女性活躍推進法では、「急速な少子高齢化の進展、国民の需要の多様化等に対応していくためには、自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性がその個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍すること(以下「女性の職業生活における活躍」という。)が一層重要」と、法律趣旨を掲げています。
(*1)国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向調査、2010年」より
(*2)センター・フォー・ワークライフポチシー「日本における女性の休職・離職と職場復帰ー企業が有能な女性の成功をサポートするには2011」より
基本方針と事業主の義務
女性活躍推進法は交付と同時に施行され、まず政府が基本方針を定めます。
次に、2016年4月以降、雇用者としての国及び地方自治体と、従業員が301人以上の企業は、事業主行動計画策定指針に即して、女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に関する行動計画を定め、厚生労働大臣に届け出る義務が課せられます。
事業主行動計画の策定
民間事業主は、次の事項を実施しなければなりません。従業員が300人以下の事業主は努力義務になっていますから、2016年の4月以降のスタート時点では、事業主行動計画を策定し届け出が義務づけられるのは、従業員が301人以上の企業です。
1.女性の活躍に関する状況の把握、改善すべき事情についての分析
【参考:状況把握する事項】
@女性採用比率 A勤続年数男女差 B労働時間の状況 C女性管理職比率
2.上記1を踏まえた定量目標や取り組み内容を記した「事業主行動計画」の策定と公示
3.女性の活躍に関する情報の公示(省令で定める項目から事業主が選択して公示)
制度運営の予測
女性活躍推進法は、10年間の時限立法です。また、「3年を超えたときに見直す措置を講ずることがある。」となっていますので、行動計画の策定提出義務がある企業の対象が広げられる可能性があります。
既に義務づけされている次世代育成支援対策推進法(以下次世代育成法といいます)による一般事業主行動計画の策定提出が従業員101人以上を対象にしていますので、今後、同様に101人以上まで対象が拡大されていく可能性があるのではないかと思います。
そしてすぐれた取り組みをした企業は、国が認定を行うようですが、こちらも次世代育成法の「くるみんマーク」付与とよく似た運営になるのではないかと思います。しかし、象徴的なマークの効果が限定的だと思われますので、認定マークを付与するかどうかは不確かです。
さて、これらの取り組は、企業の人材活用にどう影響を与えるでしょうか。
この法律施行によって、女性の採用比率を変えるかどうかや能力開発の変化は、企業の特色とトップの考えにも左右されると思います。
女性管理職比率を上げる実現性は、仕事と結婚育児等の両立について、どう選択するかきわめて個人的な決断の要素があることと、業種や規模で雇用側のニーズが多様であることから、なかなか予測が難しいと思います。
また、出産後の職場復帰に必要な保育所の整備などの政策も同時に行われていく必要がありそうです。
ただし、職業生活に注力しようとする女性の活躍の場が広がっていく気運にプラスなるといえるのではないでしょうか。
女性活躍の推進法概要はこちら です。
”退職理由に仕事への不満を上げる日本の女性は、アメリカの女性よりも高い(*2)。女性に十分な能力開発の機会を提供していない企業の問題もある”